澄川喜一展 そりとむくり

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全然知らずに行ったのだが、作品も良かったし、実は多くの人が知っている建築に関わっている方だった。イサム・ノグチが好きなら間違いなくおススメできる。横浜美術館

現代彫刻の一つの方向性として素材と形の不一致による違和感というのがあると思う。金属なのに有機的な形であるとか、木なのに工業的な形であるとかということで、イサム・ノグチはそこを突き詰めた作家なのではないかと認識している。

澄川喜一氏も基本的にはその方向で、素材としては木材がメインになる。それをある意味積み木のように組み合わせて彫刻を作る。これが初期の抽象彫刻の作品で、それで作っているののがMASKという人間と物の中間である点が面白い。

その次の段階が面白くて、木という素材はそもそも曲がっており、日本の伝統的木材建築においてはその曲線を生かしているという点に着目する。それは自然の形状そのものではなく、曲がりを生かしながらもあくまで人工的に作られた曲線となる。

作品は人工的な形の組み合わせなのに、非常に軽やかで見ていて心地よいリズムを感じる。イサム・ノグチの冷たい素材なのに温かみを感じるのと似たものがある。

そこまででも面白いのだけれど、この人は実は多くの人が知っている建築のデザイン監修にも関わっている。大きく紹介されているのは、東京湾アクアライン風の塔、東京駅八重洲口の大屋根、そして東京スカイツリーである。

東京スカイツリーは自分は安藤忠雄氏が監修だと思っていた。調べてみるとWikipediaでは監修が2名みたいな書き方をしているけど、基本的にデザイン監修は澄川喜一氏のみというのが公式のよう。そこはかとない闇を感じる。

いずれにせよ現代彫刻が好きなら観て損はないかと。