シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

すべてのエヴァを愛してくれた人へ、ありがとう。という話なのだと思う。

自分は一応TV版、旧劇、新劇と全部観てはいるが、正直そこまでエヴァに対する思い入れがあるわけではない。TV版も大学生のころに1回観たきりで再度観たことはない。

キャラクターについてもあまり思い入れはない。TV版を見ていたころはリツコさんが好きで、ゲンドウとの関係は割とショックだった気がしている。新劇はマリはエロいとか、鈴原サクラは可愛いとか思うけど、完全に見た目だけで特に強い思い入れはない。

それでもエヴァに人生が狂う位の影響を受けた人が多くいるのも知っている。自分もそれ以外の作品では深く影響を受けたり、キャラクターにガチハマりしたことはあるので、その強さというのは理解できるように思っている。

シン・エヴァには、これまでの謎に対する説明も、最終決戦というバトルも、親子や仕事という関係を通したわかりやすい成長のためのメッセージもある。でもそういうことはどうでもいい。出てくる結論もそうですかというレベルだし、個人の過去の話も取り立てて新鮮味のある話はない。

重要なのは公式がくどいくらい丁寧に、全ての主要キャラクターに対して、それなりに納得のいく終わりを迎えさせた点だと思う。

特にレイ、アスカ、加持、カヲルはそれぞれ根強いファンがいると思う。レイとアスカは前半は過剰なくらいサービスに溢れていた。終盤は物語の進行がダレてでも、全員の話をしようという意図が鮮明だった。

純粋に映画として観た場合に面白いかと言われると微妙だろう。自分は終盤になるまでずっと感動することはなかった。ユーミンの歌が流れて「またこういう選曲か」と思ったけど、それが「さよならジュピター」の主題歌であるということに気が付いたときに、感情が湧き出てきた。

さよならジュピター」は「スター・ウォーズ」のブームに乗って、日本でも本格的なSF映画を作ろうということで小松左京が中心となって作られた映画だが、評判は悪くまったくヒットしなかった。どちらかというとトンデモ映画的な扱いのほうが多いかもしれない。自分も映画は観たが、別に凄く好きというわけでもない。

もちろんそれをわかっていて、過去の日本のSF映画に対するリスペクトの気持ちがおおいにあるであろうこの選曲に、庵野の「愛」の深さのようなものを感じてしまったのだ。

本作についてのレビューもたくさん非常に興味深く読ませてもらったが、ほとんどの人が物語の謎や理屈について触れることすらしていない。映画としてそれでいいのかというと良くないが、「エヴァの完結」という意味ではこれ以上はないし、求められていることには十分に答えたと思う。

最後は確かに唐突感があるけどあれでいい。理想のカップリングはあなたの心の中にあるというのが、あの回答なのだと思う。