水星の魔女

最終話までのネタバレを含む感想になるので注意。












キャラクターの群像劇と毎回必ず面白いところがある脚本は素晴らしかった。一方でSFとしては説明不足だし、テーマが今一つピンと来なかった。

ガンダム自体にはそれほど興味がないのだけれど、脚本がルルーシュやプリプリの大河内一楼でかつ女性主人公ということで観始めた。プロローグで大河内節だけどいつものガンダムと思っていたら、第一話のウテナで爆笑してその後も楽しく見ることができた。

良いところからいくと、人物はキャラクターデザインもいいし、個人の掘り下げという点でも良かったと思う。

キャラクターデザインはミオリネを除くと美少女アニメというわけではない。体形が全員スレンダーということすらない。一方でいかにもポリコレに配慮しました感のある部分もなく、その辺りのさじ加減が素晴らしいと思う。

まあ自分は正統派美少女のミオリネが好きですけど。いやミオリネは性格はかなりアレだけど、そこ含めて好き。あと好きなのがチュチュとニカ姉。ニカ姉は自分がいかにも好きな感じのお姉さんタイプ。チュチュは癒し。スレッタは一番驚いたのはミオリネに対してガチだったこと。

あと印象深いキャラといえばベルメリアさん。ニカ姉もだが、大河内はこういう真面目で優秀だけど意志の弱い人物が、強い悪に取り込まれてしまう様を描くのが圧倒的にうまい。

物語についてはとにかく毎回必ず何か面白い部分があり、次はどうなるのかと期待させる。当たり前のようでいてこれが24話毎回できるというのはすごいと思う。

分割2クールということで、1クール目での離脱をなるべく避けるためか、1クール目は何が起こるかわからないという話題づくりを意識した展開。2クール目で1クール目の伏線を一気に回収して怒涛の物語を進める構成。若干いびつな感じもするが、全体としては成功だったのではないかと。


悪い点としてはやはりSFとして観た場合の説明不足感。メインの物語に関係するパーメット、GUND、データストームの3つだけはもう少し丁寧な説明が必要だったのでは。

SFでもファンタジーでも世界には、その世界特有の常識と禁忌というものが必要になる。そしてその禁忌を超えることが物語になる。

例えば魔法が使える世界の話だとする。この場合魔法が常識。それに対して通常の魔法を超える黒魔法があるが、それを使うと魔王が復活するとする。これが禁忌。こうすると世界の危機に対して黒魔法を使うかみたいな物語になる。

本作においてはパーメットが常識で、GUNDが禁忌なのだと思う。しかしその途中でGUNDの医療活用みたいな話がでてくる。この関係が最後までよくわからない。データストームという概念もかなり唐突に出てきた。

たぶんサイバーパンクでいうところの、パーメットはコンピュータ、GUNDはジャックイン、データストームはサイバー空間みたいなものなのだろう。プロスペラが義手なのも考えると、GUNDの医療利用というのは、神経の直接接続による機械制御のようなものではないか。

そこまではまあ理解できるとしても、クワイエット・ゼロの展開は唐突だった。

エリクトは既にエアリアルの中で生きていると言える存在なわけで、クワイエット・ゼロが実現したらエリクトはさらに何ができるのか。そもそもエリクトがエアリアルの中にいるならそれで十分なのでは。この辺りがもう少し説明がないとわからなかった。

総じてSFとしては単なるサイバーパンクの亜種以上の意味合いを見出すのが難しい。


物語のテーマとしては、親に決められた生き方ではなく、自分自身で決めるみたいな部分があるのだとは思う。一方でその物語に深みがあったかというとあまり感じなかった。

スレッタは最後まで母親好きだし、ミオリネは一番ひどい扱いの割には、親が死にそうになるとあっさり許してしまう。グエルは別に親に恨みはないし、シャディクはむしろ親の恩を裏切ったわけで。

結局全員が世襲で親の会社を引き継いで勝手に売却する話なわけで、会社を扱うのはいいとして、もう少しなんとかならんかったのかと思う。


まあ途中までは面白かったけど最後のオチがイマイチというのはこの作品に限らずよくあること。その意味でこの作品が特に悪いというわけでもないが、期待度が高かっただけに、最後は結局これなのか感は強かったのは否めない。