TVアニメ公式ガイドブックから見る"ごちうさ"の凄さ

今更それについて書くのかよという指摘はごもっともです。自分はこの本の存在に先日気が付いて読んだので御容赦を。自分にとっては「ごちうさの何がすごいのか」を客観的に考えることができて非常に面白かった。

今では日常系漫画と美術についてしか語らない人になっているが、正直自分がきらら系の漫画を多く読み始めたのは4年くらい前からでしかない。それまでも4コマは好きだったし、あずまんが、WORKINGは読んでいたが、きらら系は「絵は可愛いけどギャグは面白くない」という認識だった。

それが何か漫画を探しているときに、電子版の冒頭の無料部分でごちうさ4巻のバリスタネタを読んで「これはギャグも面白いのでは」と思ってそのままきらら系にもはまってしまうことに。その意味でごちうさは思い出深い。まあその後でごちうさ並みに面白い漫画はきららでも珍しいということに気が付くのだが。

ごちうさを語る上では「かわいい」文脈で語られることがほとんどのように思う。確かにかわいいという点には全く同意する。でもその「かわいさ」がどういう要素によって支えられており、何が突出して他の作品より優れているかという分析的な見方が「かわいい」という言葉に埋もれてしまうことに歯がゆいものを感じていた。

ただ日常系について分析的に語ること自体が「オタク臭くてキモイ」し、そもそもそういう分析的な見方抜きで、脳を溶かすように見ることが正しい楽しみ方のように思える部分もあり、日常系について何か書くことはそれ自体が無粋な気がしていた。しかしそれでも作品についての「愛」を何かの形で書きたい。そんな気持ちも強くあった。

長い前振りの後でやっとガイドブックに戻ってくるのだが、漫画を原作としてアニメを作るということは、必然的に分析的に作品をとらえざるを得ない。その意味で、特に最終章のシナリオ座談会以降が、非常に納得感のあるごちうさの分析になっているというのが大変面白かった。

特に意外だったのが、この作品を制作したWHITE FOXがこの手のかわいい系アニメが初めてという点だった。社内のアニメーターもあまり描いたことがない作風だったらしい。プロデューサーとも一緒にやったのが「ヨルムンガンド」とのことで全然違う。

しかしなぜこの会社にしたかという理由が、原作の「画面全体の情報量」を支えられる必要があったという点は非常に納得がいく。ごちうさは確かに画面の情報量が四コマの常識を超えていると思う。今はまちカドみたいにものすごい書き込みの四コマも多いけど、過去には長期連載でここまで情報量の多い四コマは珍しかったのではないか。

またKoi先生のアニメへの協力のされかたも素晴らしくて、先生がアニメの資料用に参考になりそうな写真をヨーロッパに行って実際に撮ってきて大量に送ってこられたという話もごちうさらしい。

ごちうさの凄いのは、漫画のネタかと思ったら、本当にそれがヨーロッパにあるというものがかなり多いこと。そもそもの"木組みの街"という設定もさらっと読み飛ばしていたが、調べてみるといろいろ面白くて普通にヨーロッパに行きたくなる。

あとこれもインタビューで言われているけど、かわいくないポジションの子がいない。この手の漫画は、背が小さい女の子が可愛くて人気が集中し、元気系ボケポジションの子は「かわいい」という方向からは外れることが多いのだけれどそれがない。これも確かにあずまんがの呪縛を超えたと言えるのかもしれない。

そして最後に、そういう全てが結局「かわいい」に集約される。だからやっぱり「かわいい」。ここまでもインタビューで言われていて、なんかもう全てを言い切られた感がある。

ただ個人的には、ごちうさはギャグが面白いという基本的な部分があるからだと思うんですよ。自分がはまったのもそれが理由だし。最近の単行本は若干ギャグの勢いが落ちている気もしますが、そこはやっぱり重要だと思う。

来年のアニメ3期も楽しみだ。