絵画のゆくえ 2022

絵画の可能性を久しぶりに感じた。SOMPO美術館。

本展はFACEという公募展の過去三年間のグランプリ、優秀賞受賞作家12名の近作のグループ展である。だから同じ賞の受賞者であると傾向はあるものの、全体として何かテーマ性があるわけではない。しかしだからこそ、作品をフラットな目で見ることができたように思う。その中で4名気になった作家を挙げる。

奥田文子

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この作家の面白いのは小さな人が描かれている点。人がいなければ、こういう露出の高いカラー写真的な絵を描く人はいるよねで終わってしまうと思う。ところがそこにスケールの異なる人が描かれることで、その世界が一気に現実の写真から虚構の絵画に変わる。

小俣花名

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他はそこまで引っ掛からなかったけどこの作品のインパクトが凄い。マージャンをするおっさん達。別段特にアウトロー感があるわけでもないただのおっさんである。左上のおっさんのところにある邪魔そうなコードもいい。全自動卓なのだろうか。

今あえてこれを描くモチベーションは何なのか気になった。普通に単なるおっさん好きなのかもしれないが。

高見基秀

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"対岸で燃える家"というそのまんまの題名の作品である。似たような対岸で家が燃えていたり、車が燃えていたりそんな作品が多い。他の作品を見るにハイパーリアルな絵画を描けるうえであえてこの微妙に現実感のない作品になっているようだ。

大変なことが起こっているはずなのになにか現実感がない他人事のよう。そういう感覚を的確に作品化しているように見える。

松崎森平

蒔絵による絵画というのはこれまでもそれなりに観てきた気がするが、漆の黒を夜の黒になぞらえて大画面で現代を描いた表現は観たことないように思う。こんな方法論があるのかという驚きとストレートな美しさがある。

この作家だけ自分で撮った写真がないのは、あるのだけれど漆の反射が強すぎて写真を撮っている自分の姿がくっきり映っていて上げられないのだ。


現代アートとは何か」で小崎哲哉が絵画はもはや現代アートにはなりえない的なことを言っていた。自分もこれだけ仮想現実があふれる時代には、もう彫刻しかないのではと思ったりもする。それでも絵画にも結構可能性があるなと本展で思った。