弓指寛治 "饗宴"

サイトスペシフィックなアートとして、非常に意味があったと思う。

岡本太郎記念館での展覧会である。岡本太郎記念館というのは岡本太郎が実際に長年住んでいた住居が美術館として開放されている場所で、表参道の根津美術館の近くのなかなかいいところにある。岡本太郎美術館とはまた別で、もとが住まいなので美術館というほど広いわけではない。

弓指寛治という作家についても正直全く知らなかった。岡本太郎現代芸術賞展はそれなりに行っているので、もしかしたら展覧会で一度は観ているのかもしれない。

本展のテーマは岡本太郎の妻である岡本敏子そのものである。最初に作家と岡本太郎との関係の話が書かれているのだけれど、別段岡本太郎に興味があったわけでもなく、美術家として応募した公募展の1つがたまたま岡本太郎現代芸術賞だったというレベルらしい。そして幸運にも岡本敏子賞を取ってしまった。

ここからが面白いところで彼は元々特定の亡くなった人というのをテーマに作品を作っていた。岡本敏子賞受賞者は岡本太郎記念館ので作品が展示できることになっていた。その時に亡くなった人として岡本太郎自身をテーマにした作品を作ったというのが、この展覧会に繋がるらしい。

この展覧会の印象をあえて言うと「学生が文化祭で発表してるような感じ」である。バカにしているわけでは全くない。難しい抽象化もなく、ストレートに岡本敏子から観た太郎を時代の順に描いている。

普通であればかなりあざとい感じを受けると思うのだけど、これが岡本太郎と敏子の住んでいた家であるということ自体の重みがあるので、嫌な感じを受けない。

そして太郎の没後の明日の神話の話に続く。この明日の神話を移送のための切断時の破片という見せ方で見せたのは素晴らしかった。ラストは正直これホントかよと思ったくらい衝撃だった。このままドラマか映画になりそうである。

この場だからできるアートとして、あえて奇をてらうことなく、ストレートである事の意味を感じた。