アフガニスタン・ペーパーズ

誰の言うことが真実なのだろうか。

自分は特にアフガニスタン情勢に興味を持っていなかった。そのためアメリカがアフガニスタンから撤退した後あまりにもあっさりタリバンが全土を掌握したことが驚きだった。その理由が本書を読んで納得できた。

自分も報道を聞いて、アメリカのアフガニスタン戦争はそこまで失敗していないと思っていた。オバマもトランプも基本的には撤退を訴えていたのはそれなりに成功しているからなのだろうと。しかし現実は全く違ったらしい。

だからあっさりタリバンが全土を掌握するのは予想通りの結果であり、それがあらかじめわかっていてもバイデンが全面撤退したのも納得がいく。

本書を読んで考えた点は2つある。1つは実際にはどこで間違いを正すことが可能だったのか。そもそもアフガニスタンへの攻撃自体が間違いというのはあろう。

ただそれはひとまず置いておいて戦争後で考えた場合、本書で指摘されているように、アルカイーダとタリバンを区別し、アルカイーダだけを殲滅して撤退するということは現実的に可能だったのだろうか。仮にそれができたとして、アメリカはテロの脅威から逃れたと言えたのだろうか。

少なくとも一つ言えるのは、行動を起こす前に目的を明確に設定する。目的が達成されるまでは次の目的に手を付けないということだろう。


そしてもう一点は、戦争のように自国の利害や政治信条が強く関わる事柄において、信頼できる情報というのは存在するのかという点である。特に戦争のような状況においては単純に危険なことから、強い覚悟を持ったジャーナリスト以外は直接現地からの報道が難しい。そのことからどうしても間接的な情報になる。

現にウクライナ戦争においてはロシアの窮状が報道されているが、それは本当に正しいのだろうか。自分は全く信頼できないと考えている。それはどちらが正しいかということとは別の問題だと考えている。

これに対して言えるのは、世の中には嘘か本当かが判別できないことというのはたくさんあり、判別できないということを受け入れるということではないだろうか。安易に他者の情報をフェイクニュースだなどと言わないことだ。

多くの情報と集めれれば確からしさは多少は上がるかもしれない。しかし絶対に正しいと言えることは誰にもほとんどないのではないか。メディアリテラシーが高ければ真実と嘘が区別できるという考え方自体が高慢だと思う。