ふたりべや 最終巻

自分にとって理想の終わり方だった。

自分は"恋愛"が現実でも物語でも苦手だ。"百合が好き"という人には、異性の恋愛は苦手だが、同性なら好きという人も多い。むしろ"百合"を女性同士の恋愛と定義するならそちらのほうが普通だろう。でも自分は同性でも"恋愛"になると引いてしまう。

自分が好きなのは一部では"ロマンシス"と呼ばれるような、恋愛ではないが友情以上のような関係性だ。例を挙げるときんモザの忍とアリス。となりの吸血鬼さんの灯とソフィー、スタァライトの華恋とひかり、ブルリフ零の陽桜莉と瑠夏等。

"ふたりべや"の面白いところは、全員が女性同士のカップリングの中で、付き合うということと付き合わないということがフラットに選択として提示されている部分だと思う。男女のラブコメだと通常は付き合うことが目的になる。

9巻の最後で今まで真面目に意識してこなかった「付き合う」という選択を桜子が提示したとき、これはもう終わらせる方向なのだと覚悟し、今後の展開をどうするのかが気になって仕方がなかった。

最終巻の10巻はこれまで登場した友人たちのカップルがどのような選択をしたかが丁寧に描かれる。その一方でいつも通りのほのぼの展開も相変わらずだけど、ところどころでかすみが真剣にどうしたいかを考える。

結論としては桜子とかすみは今までどおりの「付き合わない」関係を継続することを選択する。この二人であればどちらの選択をしても祝福できると思うが、自分としてはふたりべやらしい結論だと思って安心した。

百合は他のジャンルのアニメでも普通に扱われるようになって、すっかりメジャーになった気がしている。

一方でふたりべやのように、萌えでもリアルでも恋愛でもバディでもない、理想化された女子同士の関係のふんわりした綺麗さを、そのまま肯定する作品は今でも唯一無二なのではないかと思う。

本当にいい作品だった。ありがとうございました。