ジャヒー様はくじけない!

考えさせられる部分もあるが、あくまで笑いの中に回収されるのが良い。

本作はよくある異世界のキャラが現代の日本にやってくる系である。かつては魔界No.2だったジャヒー様が滅ぼされてしまった魔界を復興しようとするという話だけど、それもまあよくある設定である。

これが普通であればどこかの家に厄介になるのだが、ジャヒー様はそこが異なる。彼女はあくまで自活しようとする。それは独立心が旺盛だからというわけではなく、単に魔界ではNo.2だったというプライドのためである。人間界ではその力もなくなってしまったのに。

だから当然自活なんてできるわけがない。結局店長のような周りに助けられることになるのだが、あくまで彼女は居酒屋バイトでお金を稼ぎ、自分のことは自分でしようとすることにこだわる。でも毎回能力不足でうまくいかない。それでもくじけない。そんな話である。

考えてみるとこれはかなり耳の痛い話だ。環境の変化を受け入れることができず、過去の地位から来るプライドにしがみついて他人を拒むものの、結局うまくいかずに若者に助けられるおっさんの話ではないか。

ジャヒー様の見た目は高校生ではなくて、小学生くらいの子供モードと大人モードを使い分ける。大人モードの方が力を使うので、普段は子供モードである。居酒屋で働くのは子供ではできないので、この時は大人モードである。

この設定が秀逸で、高校生でもバイトはできるが、学校にも行かずに生活のためにバイトをしているとやはりおかしい。もちろん中卒で社会人という人もいるだろうがそこまで多くはない。あくまで大人であることが重要で、バイト先が居酒屋というのもあえて女子高生ができないバイトなのだと思う。

一方で子供であることはもちろん可愛いからというのもあると思うが、子供であれば「かつての魔界No2のジャヒー様」を笠に着て強がっても笑いとして扱えるのは大きいと思う。これが大人であればかなりイタイ感じになる。重要なのは意外と重いテーマを扱いながらも、あくまで笑いとして扱えることだと思う。

本作は周りに助けられて成長していくジャヒー様という一面もある一方で、過去の栄光を誇りにする生意気な一面も残したままである。そこがいい。ジャヒー様が改心して綺麗なジャヒー様にならないところがいいのだ。

そんなジャヒー様を支えるキャラクターたちの中で自分が一番好きなのがデュルジだ。単純に見た目が上品でノースリーブがエロいのはある。人間社会においては一番の成功者なのに、ジャヒー様の前ではドMで嫉妬深いというギャップも良い。個人的にはむしろドSのデュルジに罵られたい。

店長も良い。店長は現実にはあり得ない完璧母性キャラクターなのだけれど、ジャヒー様の常識からは想像できなかったような善意に受け入れられることによって、ジャヒー様が現実を受け入れるようになっていくという過程は考えさせられる。

えらく真面目に書けてしまったが、こんな重い話では全然ない。普通にギャグアニメとして笑えるし可愛いので、きらら系が好きなら普通におススメできる良作である。